実梅とは、梅の果実を食用とすることを目的とした梅のことです。
実梅の種類は、有名なところを挙げると、南高、古城、玉梅、白加賀、豊後、鶯宿、月世界、甲州最小などがあり、その特徴や開花時期、収穫時期などの詳細をご紹介していきたいと思います。
目次
梅の品種はかなり多くその数は何と300種類以上と言われています。
その中で、実用的な分類の仕方として「実梅」と「花梅」があります。
簡単に言うと、「実梅」は、梅の果実を梅酒や梅干し、梅シロップなどにする目的がある、「花梅」は、花の観賞用としての梅を言います。
あくまでも、実用的な分け方であって、実梅の花が観賞用に適さないかというとそうではなく、観賞用としても優れている実梅も多くあります。
実梅の種類・特徴・開花時期・収穫時期
南高(なんこう)
南高は、実梅の代表的な品種になります。
梅の生産量が日本一の和歌山県が原産地で、誰もが知っている高級梅干しブランドです。
明治三十五年(1902)に高田貞楠氏が、内中ウメから大粒の個体を発見し、それを高田梅と呼んでいたそうです。
その後、昭和四十年(1965)に高田梅の高と、母樹選定調査に尽力した南部高等学校の南を合わせて、南高と命名されました。
南高の果実の特徴は、大粒で肉厚なところです。
大きさは、平均25g~35gでこれは梅の中でもかなり大きい方です。
また、皮が薄く柔らかいことから、特に梅干しに適しています。
開花時期は、2月~3月で、白い花が咲きます。
収穫時期は、6月~7月で、実は熟すにつれて黄色や赤みがかかった色になり、収穫するときは、実の重みで自然落下するのを待つそうです。
古城(ごじろ)
古城は、南高と並び、日本一の梅の生産地和歌山県が原産の梅です。
「ごじろ」とは珍しい名前ですが、これは大正後期に、原産地である田辺市長野の那須氏という古城を発見した人の屋号からきているそうです。
古城の特徴は、まず青梅であること。
美しい果実として有名で別名「青いダイヤモンド」なんて言われています。
南高よりは、少し小さめですがそれでも大粒で平均15g~30gあります。
皮がしっかりしていて、実くずれがしにくいことから、梅酒に適しています。
梅酒と言えば、古城と言われるほど、梅酒に使われている梅です。
その特徴から、梅干しには適さないと言われています。
開花時期は、3月~4月で白色の花が咲きます。
収穫時期は、やや早めで5月下旬~6月初旬です。
栽培の方法が難しいらしく、年々生産量が減少しているそうです。
玉梅(たまうめ)
玉梅は、別名「青軸」と呼ばれている実梅です。
実梅なのですが、その花は美しく、緑がかった白色で観賞用にも適しています。
実梅としても花梅としても楽しめる梅の代表です。
ですから、庭に植えて、まず花見を楽しみ、その後で収穫を楽しめるという理由で庭木として人気がある品種です。
果実に関しては、平均25gと南高よりも少し小ぶりですが、大粒な方です。
見てもよし、食べてもよしの玉梅ですが、この果実がまたすごいです。
通常、梅の果実は、梅酒に適している果実の場合は、梅干しには適していなかったりするのですが、玉梅はどちらにも適しています。
梅干しにしてもよし、梅酒にしてもよしとかなり実用的な梅なのではないかと思います。
開花時期は、3月上旬。
収穫時期は、6月上旬頃です。
白加賀(しろかが・しらかが)
白加賀は、江戸時代から存在している歴史ある実梅です。
元々、その名の通り北陸が原産地なのですが、現在は関東での栽培が多いようです。
特に、群馬県が白加賀の生産地として有名です。
ちなみに群馬県は、和歌山県についで梅の生産日本第2位となっています。
その果実は、大きさ平均25g~30gと大粒で、肉厚です。
花も美しく、良い香りがして観賞用としても楽しむことが出来ます。
果実の方も優れていて、梅酒、梅シロップに適しています。
基本的には梅酒として使われる白加賀ですが、梅干しにしても人気があります。
肉厚で、皮が厚く、果実が硬いという白加賀の特徴が、好きな人には好まれる味なのかもしれません。
開花時期は、3月上旬~下旬で白色の美しい花が咲きます。
収穫時期は、6月頃です。
豊後(ぶんご)
豊後とは、その名の通り大分県が原産地の実梅です。
「あんず」との自然交雑実生で誕生した珍しい梅です。
果実の特徴は、実が大きく、30g~40gあり、これは、実梅の中でもトップクラスに大きい方かと思われます。
梅酒や漬梅、カリカリ梅などに適している梅です。
この豊後梅は、大分県が原産地なのですが、実は青森県で昔から作られています。
青森県で梅というと珍しいかもしれませんが、その理由は、豊後が冷涼な気候を好むあんずとの中間品種で、梅の中でも最も耐寒性が強いからなのだそうです。
開花時期は、2月中旬~3月上旬と早く、薄いピンク色の清楚な花が咲きます。
葉が大きいことも特徴的です。
実梅は真っ白な花が多いのですが、豊後は白がベースながら少しピンクが入っていて美しいと評判です。
観賞用としても適している実梅であると言えそうです。
収穫時期は、6月~7月頃です。
鶯宿(おうしゅく)
鶯宿梅は、果肉が硬く、梅酒や梅ジュースに最適な実梅です。
全国的に栽培されてはいますが、生産地としては、徳島県が有名です。
鶯宿の歴史は古く、南北朝時代から存在すると言われています。
また、その命名にもエピソードがあり、村上天皇のとき、清涼殿の梅が枯れたので紀内侍に梅を移したところ、「勅なれば、いともかしこしうぐいすの宿は、と問はばいかが答へむ」と結びつけられていて、それを見た天皇は深く恥じたという故事です。
簡単に訳すと、「梅の木は献上するけど、毎年この木を訪れる鶯が私の宿はと言ってきたら何て答えるの?」という感じです。
なかなか、面白いですね。
開花時期は、3月下旬でその花は、白から薄いピンクと言った感じの一重咲きです。
収穫時期は、6月~7月です。
月世界(げっせかい)
月世界とは、徳島県が原産地の実梅です。
「月世界」という名前が珍しいですが、これは昭和四十四年(1969)にアポロ11号が月着陸をしたことにちなんでいるそうで、比較的新しい品種です。
月世界は、実梅の鶯宿と城州白を交配して育成されたものです。
果実は大きさ25gくらいと平均的な大きさです。
梅酒にすることが多いようです。
開花時期は、2月中旬~3月上旬頃で大輪で薄いピンク色の花が咲きます。
実梅の中でもピンク色の花は珍しく、しっかりとしたピンク色が目立つのは、豊後と月世界くらいではないでしょうか。
収穫時期は、5月下旬頃と鶯宿より7日ほど早いです。
また、特徴としてヤニ果が発生しやすいという特徴があります。
甲州最小(こうしゅうさいしょう)
甲州最小とは面白い名前ですが、その名の通り、小粒な梅の代表ともいえる実梅です。
また別名、「甲州小梅」と呼ばれたりもします。
その大きさは、平均5グラム程度です。
原産地は奈良県なのですが、山梨県に多い品種です。
果実が小さくて、実も硬いことからカリカリ梅として使われることが多いようです。
また、甲州最小は、花粉が多いので受粉樹としても有名な品種です。
小梅と言うと、珍しい感じがしますが、小梅の品種は、甲州最小以外にもあり、有名なところだと「竜峡小梅」や「おりひめ」があります。
甲州最小は、このような小梅の品種の中でも一番小さい小梅です。
開花時期は、2月~3月で小輪の白い花が咲きます。
収穫時期は、早く、5月~6月頃です。