花梅とは、花を観賞することを目的とした梅のことです。
これは園芸学的なもので、花を観賞することを目的とした梅を「花梅」と呼び、実を採取することを目的とした梅を「実梅」と呼びます。
花梅は、さらに3系9性に分類されますので、その中身を詳しく紹介していきたいと思います。
目次
- 野梅系:野梅性、難波性、紅筆性、青軸性
- 緋梅系:紅梅性、緋梅性、唐梅性
- 豊後系:豊後性、杏性
梅の種類は多く、現在では300種類以上とも言われています。
日本の国花は桜ですが、古き万葉の時代には、花といえば梅のことを指したそうです。
ちなみに万葉集で読まれた梅の花の色は全て白とされているそうです。
梅は弥生時代から遺物が発掘されており、九州辺りでは自生もあったようですが、奈良時代に中国から日本へ渡り普及したもののようです。
英名や仏名には「日本の」杏(アンズ)とされているのが、興味深いです。
野梅系(やばいけい)
野梅系(やばいけい)は、中国渡来の最も原種に近い品種の梅です。
花梅の過半数がこの野梅系(やばいけい)であると言われている種類の多い系統です。
特徴は、枝が細いこと、小枝が多いこと、花や葉が比較的小さいこと等があります。
また、香りはとても良いです。
野性的な趣をその姿や香りに残しているので、万葉の時代に歌われた花の多くは、この野梅系(やばいけい)の花に近い姿ではないでしょうか。
野梅性(やばいしょう)
野梅性(やばいしょう)は、最も原種に近い梅です。
花は、白やピンク色が多いですが、赤い花を咲かすものもあります。
トゲ状の小枝を多く持ち、白や淡紅色の花色で香りが高く、古い神社に植えられているようなパッチリと咲くおしべの華やかな花の姿は、一般的な日本人の持つ梅のイメージに近いかも知れません。
八重寒紅なんかは、その名の通りで赤い花を咲かせます。
品種は、道知辺(みちしるべ)、初雁(はつかり)、冬至(とうじ)、八重野梅、見驚、黄金鶴、日月などがあります。
難波性(なにわしょう)
難波性(なにわしょう)の特徴は、トゲ状の小枝は少なく、葉は丸く、花は梅のイメージから少し離れた八重で遅咲きなところです。
園芸種らしい背の低めな姿で、静かで大きめの八重咲きの姿が美しい種で、花の香りも良いです。
種類の多い野梅性と違い、花の色はほとんどが白色です。
品種は、御所紅(ごしょべに)、蓬莱(ほうらい)、難波紅(なにわこう)などがあります。
開花時期は、2月~3月くらいが多いですが、品種によって異なります。
挿し木が可能な物が多いです。
紅筆性(べにふでしょう)
紅筆性(べにふでしょう)の梅の特徴は、つぼみの先が紅く尖り、紅筆のようなところです。
つぼみが紅いのに花は白色の花が多く、赤と白のコントラストがより梅の花を美しく見せます。
開花した際、花の先に尖った部分と紅色が残るため、蝋細工のようなきりっとした美しさがあります。
品種は、紅筆(べにふで)、古金欄(こきんらん)、内裏(だいり)などがあります。
青軸性(あおじくしょう)
青軸性(あおじくしょう)の特徴は、花の色です。
梅の赤や緋色、桃色のイメージとは違った、緑白い品種です。
枝もガクも緑色、つぼみも白緑色で花も青白色をしています。
品種は、月影(つきかげ)、白玉(しらたま)緑萼(りょくがく)などです。
緋梅系(ひばいけい)
緋梅系(ひばいけい)とは、野梅系から変化した梅の種類です。
特徴は、そのほとんどの花の色が紅色・緋色であるということです。
また、花の色だけではなく、枝や幹の内部も赤いという特徴があります。
葉は小ぶりで盆栽などに人気のある系統です。
江戸時代の掛け軸などに描かれるような濃い紅色の花が古風な趣を持っています。
紅梅性(こうばいしょう)
紅梅性(こうばいしょう)は、その名の通り、ほとんどが明るい紅色の花を咲かせることが特徴的です。
新梢は日焼けしても黒褐色にはならず青みが残ります。
少ないですが、白色の花を咲かせるものもあるようです。
緋梅系の特徴として、枝も赤いという点がありますが、紅梅性はそこまで枝は赤くならないです。
品種は、大盃(おおさかずき)、紅千鳥(べにちどり)、東雲(しののめ)など、その多くは和室に合うような盆栽イメージの紅梅です。
緋梅性(ひばいしょう)
緋梅性(ひばいしょう)は、紅梅性に比べて花が、更に濃い赤色をしている点が特徴的です。 緋梅系の中で最も赤みがある品種であると言われています。
また、新梢は日焼けすると黒褐色になります。
品種は、緋梅(ひばい)、鈴鹿の関(すずかのせき)、鹿児島紅(かごしまべに)などがあり、紅梅性(こうばいしょう)と比べると、より古風な趣です。
唐梅性(とうばいしょう)
唐梅性(とうばいしょう)は、花色が特徴的です。
咲き始めは、薄いピンクから赤色ですが、咲終わりには白くなるという特徴があります。
花が下向きにつくのが他の梅の花と比べ特徴的で、花柄は長いものが主流となっています。
品種は、(からうめ)などがあります。
葉枝が1m程度と短いことも唐梅性(とうばいしょう)の特徴であると言えます。
豊後系(ぶんごけい)
豊後系(ぶんごけいは、梅と杏を交配させた雑種です。
葉は大きく育ち、花びらが大きく、その色は、桃色が多く、杏(アンズ)に似ている点が特徴的であると言えます。
大ぶりな八重咲きが、華やかな梅の花と交配種を感じさせられますが、香りはあまりありません。
また、豊後系の梅は遅咲きであると言われています。
豊後性(ぶんごしょう)
豊後性(ぶんごしょう)は、杏に梅を掛け合わせた品種です。
大輪の花を咲かせるのが大きな特徴的で、花の色は桃色が多いですが、白色もあります。
遅咲きです。
枝はやや太く表面に毛がある丸葉です。
代表的な品種は、桃園(ももぞの)、楊貴妃(ようきひ)、武蔵野(むさしの)など、香りはあまりありませんが、名前通りあでやかな雰囲気の花です。
杏性(あんずしょう)
杏性(あんずしょう)は、杏子と梅との中間品種です。
同じ豊後系でも豊後性(ぶんごしょう)より枝が細く、葉もこぶりで表面に毛もありません。
花は薄いピンクから濃いピンク多いようです。
新梢は細く、日焼けすると灰褐色になります。
代表的な品種には、一の谷(いちのたに)、緋の袴(ひのはかま)、記念(きねん)など、豊後性(ぶんごしょう)と比べ可愛らしい花です。